福岡市中央区赤坂:蓬莱園 普通のざっかけない「ちゃんぽん」の逸品

shin_papa402006-09-03

うまいのだけれど、覚悟がいる店がある。

曰く、座るといきなりそれが出てくる店、とか。
親父の強面に怖気づかずに頼まなくてはならない店、とか。
あるいは、妙な符丁があって、それを守らなくてはならない、とか。


ここの店は、ただひとつ。
出てくるまでの時間を、予想してはならないことである。
出てくるときは比較的すぐに出てくる。
出てこないときは下手すれば30分ほども待たされる。
さらにあろうことか、頼んだあなたのことが忘れられていたりすることもあるのである。
だからここに来て、しばらく待って、「まだならいいよっ」て怒って店を出て行ったりしても、周りの客はあなたの気持ちに同情などしない。そもそもこの店を選ぶことが間違っているのである。万がひとつ、あなたが一見でこの店に入ったということもあるであろう。そのときは運がなかったと思ってあきらめるしかない。


さてそうまでして食うこの店が超絶技巧的に美味いのか、という疑問がこの文をお読みの貴兄にはふつふつと沸き起こってくるだろう。
断言しよう。
それほどまでには美味くない。

だが、なんとなくホッとする味なんである。
写真のちゃんぽん。
麺も普通である。
スープは、トリガラとトンコツを合わせてあるのだろうか。普通である。
出てきたときにはむしろトゲを感じるようなスープである。
そこに、博多の人に教わったのだけれど、酢をかけまわすのだな。

そうすると、急激にスープが丸くなるのである。
さらに食い進むうちにたっぷりのやさいから出る甘みが渾然一体となってくるのである。


取り立てて何が美味いというものではない。
普段の美味さがそこにある。
そういう普段の価値に気づかせてくれる、そういう意味では銘店である。