鹿児島天文館南:のり一 その「まずい」は、実は美味いんじゃ。

shin_papa402006-09-08

三平を紹介してくれた鹿児島の後輩M松君と、また飲んだ後の店を物色していたのである。


M松「どんなラーメンがいいすかねえ?」
ボク「さっぱりとした、京都の町を思わせるような気品のあるのがいい」
M松「か…鹿児島の町で、さっぱりですか!? しかも京都といわれてもねえ」
人類の進化は二律背反を合理的に処理することで脳が発達したところからもたらされたものである。M松君、その悩みは君の成長に繋がるのだよ…などとほざくアホ先輩(ボクのことですね)を連れて暖簾をくぐったのが、ここ。


ここ、実は大変気になっていたのである。
広い間口からはU字になった大きなカウンターが目に入る。
東京にある、昔ながらの銘居酒屋の巨大版のような感じ。
そして夜中にはその大きなカウンターに人がずらりと並び、一心にラーメンを啜っているのである。


M松「ここ、うまいっちゅうか何ちゅうか…。しらふではあまり食いたくないものなんですけどね」
そのコトバの裏には、明確に「不味いんですけど」というような謙遜とも自虐とも取れる気持ちが潜んでいるのを、酔眼のボクは鋭く感じたのである。
M松よ、まだまだ人生の修行が足らんな。


人に紹介するときに、なぜかそのようにけなしながら連れて行く店がある。
確かに一流名店ではない。だが地域で親しまれている店、その店独自のやりかたと味の店であることが多い。要は万人受けするものではないということを自覚しながら、それでも連れて行くのである。
そのような店で、いつの間にか姿を消した店も多い。

熊本市三軒町通りのあの高校生達に親しまれた名店、東京日本橋室町の路地裏に会ったあの名店。いずれもラーメン一杯300円程度の店であった。
親父が仕事に徹していたのも、夫婦や一人で切り盛りしていたのもその2店は共通していた。


ここは…と見ると、バイトだろうか正社員だろうか、長く大きなカウンターの中にずらりと「親父」が並んでラーメンを作り、出している。

M松「さっきは出してもらいましたから、こっちはボクが出しときますよ」
おお、お前も人様に奢るようになってきたか。
ふと壁のお品書きを見ると…「ラーメン 300円」


なんですと?


消え去った名店の数々と同じ値段である。
これは、良心的な店なんではないか?


「ラーメンでーす」
目の前にスッと丼が差し出される。
澄んだスープ。
ほほう。これは酔い腹にすっと染み入りそうだのう。
ところどころに浮いた唐辛子もまた、キブンである。

一口啜る。
おう、トリガラとトンコツの素直なスープ。
最近の、魚介系ブレンドとか、獣系がなんたらとか、そういう複雑系とは全く違う路線である。ある意味、王道だ。
複雑系愛する人たちからは物足りないと思われるだろう。
しかしこの味は、この味としてここに踏みとどまることで価値がある、そういうものと見た。

ずいずいと麺を啜り、スープを飲み干す。


こんな麺を、夜の街中にドンと出してくるとは、鹿児島も奥が深いなあ。