沖縄県那覇首里:首里そば コクリコクリの麺に舌鼓。

shin_papa402006-10-06

最初に沖縄に降り立ったのは17年ほど前。
ダイビングのライセンスを取りに行った。
折しも「彼女が水着に着替えたら」のブーム真っ最中であった。
7月の初旬で本格的観光シーズンには早く、沖縄のせいではないのだけれど、なんとも印象が悪くて「二度と来ないかもしれない」と思いながら東京へ帰った。

だが縁とは不思議なもの。
帰京後3日ほどして。
「おい、しん○○、ちょっと話がある」…。
部長に呼ばれた。
こんな風に呼ばれるときというのは何か宜しくないことが起こる場合が多い。
「何すか?」部長席に行ってたずねると、
「お前、沖縄担当な」
「へ?」
得意先が沖縄へ進出するに当たって、マーケティング担当をやれというお達しである。
しかも先輩社員と明後日から沖縄へ行って、まずロケハンして来いという。
そこから、ボクと沖縄の不思議なご関係が始まったのである。


さて、担当となったからにはと資料を読みまくり、知識をグイグイ吸収していった。加えてその知識を元に立てた仮説が事実か、あるいは可能なモノなのかを実地に観察しに行ったりした。「マーケティングは机の上にあるのではない」という今でも持っている信念はこの頃に培われたといってもいい。


その観察した文物のひとつに「沖縄すば」がある。
17年前、それは今のようなブームではなかった。
おばぁがひっそりと小さな店で営むような、そんな存在だった。
しかし沖縄の人たちのソウルフードとして脇をグッと支える存在ではあった。
当時の有名店は首里の「さくら」。
残念なことに数年前に閉店してしまった。
灰汁でうつ、枯れた味わいが素晴らしかったという。
行きたいと熱望していたのだけれど、首里の住宅地の中という立地だったので残念ながら機を逃して今に至る。

であれば、今をときめく、首里の「すば屋」へ行っておかないとまた轍を踏むことにならないか。
そう考えて久茂地の「りうぼう」(デパートの名前)からタクシーに乗ったのである。
「運転手さん、首里か識名あたりで美味しいそばやに行きたいんですけど」
知らない土地に行ったときに下調べをしていくのも大事であるが、特に街の情報屋といわれるタクシー運転手さんに聞くのも大きな収穫がある。
そうして連れて行ってくれたのは「首里そば」であった。


時間は11時40分。
既に店内満員で、入り口付近には8人程度の立ち待ち客が並ぶ。
この込み方、17年前とは隔世の感である。
待つこと20分、席に通された。
早速頼んだのは「そば中」。
中はサイズね。ほかに大と小がある。当たり前か。
しばらくして運ばれてきた麺は、透明感のある薄い褐色のスープの中に、くっきりとした芯の強さを見せるやや細麺。麺のカーブの仕方が、なぜか張りを感じさせるという不思議なプロポーション

まずはスープをズズッと。
鰹のダシが口の中にスッと広がる。沖縄そばのスープはトンコツと鰹節のダシの混合であると聞いていた。ここのは鰹ダシの圧勝と見た。
次に麺を。
やや固めの箸触りを感じながら口の中へ。
噛むと、麺が一本ごとにコクリコクリと切れていく。
ほほう。面白い噛み応えじゃわい。
咀嚼すると、なんとも麦の味わいが口の中に広がる。
けれどすっきりしたスープのおかげで、随分と洗練された味の融合である。
麺に載せられた針生姜がそこにさっぱり感のニュアンスを加える。
これはこれは。二日酔いの腹に大変有難い。
南の麺は、結構な麺でございました。