福岡市飯倉:まくり フツーの街角にこそ味のある人生がある。

shin_papa402007-04-07

小学生の頃、街は自分のフィールドだった。
買ってもらった自転車で、あちらこちらの脇道を走ってみる。
神社がある。上り坂がある。こんもりとした茂みの向こうに人家が見える。
そうして知らない道を走ってみると、突然知っている道に出てしまったりする。
いつもの道に、いつもとは違う角度で躍り出たとき、新たな風景の発見があったりする。
道を知り尽くしたら、もう少し遠くへ、いつもの枠を少しはみ出してみたりする。
あるいは知ってる道を、ビュンビュンとスピードを出して走ってみたりする。
いつもの街でドキドキしながら、まったりしながら楽しんでいた。

大人になって。
何回か引っ越して、育った街と違う街に落ち着いたのだけれど。
ふと、自分の街の小道を殆ど知らないことに気がついた。
自宅から会社へ向かう方面の道しか知らない。
反対側の180度の角度の細かな風景を知らない。
これはいけない。

ということで、マピオンから出力した地図を片手に歩き回ってみることにした。
別府5丁目から、新しい道路の計画地になっている住宅地に分け入っていく。
クルマも擦れ違えないほどの幅。
微妙なアップダウン。
子供の頃なら楽しんで自転車で走り回っていた感じ。
でも抜け道になっているのだろうか、意外とクルマの通りが多い。

住宅地に分け入って5分。妙な看板ハッケン。
先にも書いた細い道である。
その細い道から左に、さらに細い道があるのだけれど、その奥に「ちゃんぽん専門店」があるというのである。
ちょいと覗いてみると、道のどん詰まりにアパートがあり、そのアパートのこちらから2軒目のドアに、店の名前が書いてある。
フツーのアパートである。
秘境異次元な感じ。
でもそのときは営業中ではなかった。
その店のレポートはまた後日。


そんな不思議な街角を見ながら、息子がやがて通うことになる中学校を通り過ぎ、水路の横の桜を楽しみ、坂を上って早良区へ。


坂を下りてホームセンターの横をふと見ると、まっ黄色のお店が。
「黄金の福ワンタンまくり」
んーと、どこまでが修飾語でどこからが店名か分からん。


でも店の側面にメニューがずらりとビジュアル展開。
これは入ってみよう。


頼んだのはデフォルトの「肉福ワンタン麺」。
しばらくして出てきた麺は、スープが黄金色に輝くキレイなもの。


まずはスープを啜ってみると。
ほほー。
まずトリガラの旨みたっぷり。
生姜がキリリと味を引き締めている。
こりゃよかですなぁ。
福岡博多の小さな路面店で、トリガラスープがこんなに基本に忠実に出てきたのは驚きだ。


次に麺。
チュルルンと幾分細めの麺を。
…あやしい腰つき。
あ、違う。
微妙なコシがある。
咀嚼するごとにコクリコクリと千切れていく感覚が歯に残る。
おー、面白かですなあ。

ワンタンは。
これもチュルンとした皮。
その皮に包まれた、意外と多いお肉。
噛んでみるとジューシーなスープが口の中に広がる。
肉の旨みとともに、最初に感じるのはゴマの香り。胡麻油が仕込んであるのかな。
そしてスープともまた違う生姜の隠し味。
おお、旨いですねえ。
このワンタンだけでビールが飲めそう。
でも昼だから我慢しとこう。


ああ、美味しかった。
我が家から街を探検しつつ歩いて25分。
近いし。


店内にチラシも置いてあり、ホームページも充実。
「まくり」という店名の由来もきちんと書いてある。
その一生懸命なお店の方の姿を思い起こしながら、その味も思い出し、40数年生きてきたボクもこの後の人生「まくって」行かんと、イカンなぁと気合を入れるのであった。