東京浜松町:浜亭 大衆食の中に気品あり春菊天蕎麦。

shin_papa402007-04-30

最近、スケジュール管理を精緻化したところ、ぎりぎりまで要件を突っ込む傾向が出てきた。
そのしわ寄せは昼飯時間などにやってくる。
先日も午前中ぎりぎりの飛行機に飛び乗る。
羽田に着いたら、すぐにモノレールへ、そしてタクシーで汐留のオフィスへ。約束は14:00。
ああーっ、時間がな〜い。
でも、腹が減っては戦が出来んではないか。


そういう時間のないサラリーマンの味方、立ち食い蕎麦が大都市にはそこここにある。
ターミナルビルどころか私鉄の駅にまできちんとある。
九州へ帰ってきて寂しかったことのひとつは、駅や街中に立ち食い蕎麦屋とカレースタンドがないことだ。
時間と財布の中身にゆとりのないサラリーマンの実数が少ないんだろうなぁ。
あるいはそこまでがっついて「大衆に埋没」しないよ、という地方在住者の感覚なんだろうかなぁ。
都会では大衆の一人として埋没するのも、また気持ちいいもんだけれど。


さて飛び込んだのは昨年も取り上げた浜松町「浜亭」。
入り口にチケットを買うための自動販売機が2台もある。
けれど店内は14人も入ったら、もう満員。
いかにお客の回転がいいか分かろうというものだ。


今回頼んだのは「春菊天蕎麦」。
頼んで2分くらい。
蕎麦をちゃっちゃっと釜の中から取り出して湯切りしてメラミンの丼へ。
その上からコンクのヤツを湯だてたつゆを注ぐ。
東京風だから醤油色の褐色のつゆ。
醤油の香りがプワンと広がる。
そのうえにちょい厚めの天ぷらのコロモをまとった春菊が。

おまちどーの声とともにおっちゃんがカウンターの向こうからぬっと丼を差し出す。

つゆの上に天ぷらのコロモから揚げ油がさっと広がって、
あ〜いかにも立ち食い蕎麦屋の匂いだなあ。


最初につゆをずずっと啜る。
お約束の東京の立ち食いのチープな、旨さ。
若手で下働きで走り回っていた昭和の昔を思い出す。
日本橋三越前の立ち食い蕎麦屋によく行っていたものだ。


次に蕎麦麺をずずずっ啜る。
手繰る、なんて上品な食い方は立ち食いに似合わない。
ずるずる啜るんである。
麺に天ぷらから溶け出したアブラが香って、つゆの醤油味とも絡まってなかなか良いもんだ。


そしてお待ちかねの春菊天。
あまり栄養とかないらしいけれど、春菊の命はこの爽やかな香りだな。
チープな醤油味のつゆにキラリと光る気品を与える香り。
これは東京風の蕎麦の、隠れた一品だなぁ。
上品な蕎麦屋では出せない商品だろう。
さらに博多風のダシ勝ちのスメには、春菊天は合わない気がする。


東京以外の場所でこの文章をお読みの諸兄は、機会があれば東京の立ち食い蕎麦で「春菊天蕎麦」を試してくださいな。
意外な取り合わせだけれど、御納得いただけることと思う。
立ち食いだから失敗だなあと思っても損失はたかが知れている。