福岡春日市:末広軒 粗野にして、繊細なすっきり麺。
そのラーメン屋は、駅前ビルの食堂街の奥にあった。
暗い通路の奥のほうだ。
手前には「味の魔大陸」で以前取り上げた春日食堂がある。
地名を頭につけた食堂の名前でチェーン展開のものがあるが、ここは違う。
地元のおばちゃん、おじちゃんたちがやっている有機野菜を多用した凄い食堂だ。
けれど今日の目的はここではない。
引き戸を開けて店内に入る。
するとボクのリビドーを一気に刺激する豚骨スープのかぐわしい香りに包まれる。
きっちりと炊き上げてるぞーっという気合満々である。
カウンターの端っこに座って、メニューを選ぶ。
初見ラーメン店はデフォルトの「ラーメン」を頼むのがルールだけれど、実はココは2回目。
であればちょいと贅沢を。
「チャーシュー麺ください」。
630円である。
良心的な値段ではないか。
カウンターの上のお品書きを見ると、きくらげやもやしや、その他いくつかのトッピングのものもあるが、それぞれ値段が490円だったりして。
本当に、良心的な値段じゃないか。
出てきた。
ラーメン丼の上に開いた大輪のボタンの花。
そういう表現がピッタリのチャーシュー麺。
凄い。
そういう第一印象。
スープは半透明で、きっちりとあく取りなどを施された丁寧さが分かる。
見れば店主のお兄さんは、リーゼントをきっちりと決めた気合十分ないでたち。
どっかで見たぞ、こんな風景。
あ。
西新の魅羅来留亭だ。
同じような気合を感じる。
まずはスープをズズッと。
ここはレンゲはないから、丼を両手でささげ持って口をつけて啜る。
と。
透明感のある美スープにしては、凶暴な豚骨の本性がガツンと口の中に飛び込んでくる。
うおおおお。
なんちゅう、スープじゃ、これは。
次に麺を。
細麺で、エッジが立った切りタイプの麺。
これがこの凶暴スープとベストマッチング。
さらにドンドン食べても、まだ在るまだ有ると安心のチャーシューを食う。
厚みがあって、いいねえ。
グングン勢いで食べていたらアッという間に麺完食。
替え玉をもらう。
麺が茹だった頃に、
「ラーメンの器、ください」。
食いかけというか、若干のチャーシューが沈んだ、スープがまだ入っているボクの丼を一度下げる。
ほほー。
麺だけ皿にくれるんではないのだな。
この風景、どこかで見たことあるぞ。
あ。
やっぱり魅羅来留亭だ。
気合が入っているのは、アソコもココも、髪型だけではないのだ。
「はいおまちどー」と出てきた丼を見れば。
キレイに泳がされた替え玉の麺。
新たに盛られたネギ。
そして何より、沈んだチャーシューとは別に、麺の上に新たに置かれたチャーシュー。
あの、この替え玉で100円というのは安すぎではありませんか?
しかも。
替え玉で少し薄まったスープは先ほどの凶暴さをグッと鎮めて、なんと上品なスープに変貌していたのである。
ずずず。(麺を啜るさま)
ずずず。(丼に口をつけてスープを啜るさま)
完食です。
スープも残さんかった。
荒っぽさと繊細さを味わえるこんな麺は初めてでございました。