百道浜RKB:五島手延うどん ぷりんぷりんちゅるちゅる。
この週末は福岡市百道浜のRKBの周りで「第12回RKBラジオまつり2008」をやっている。
ヤフードームやボンパラス(ちょい高級スーパー)のあたりはともかく、百道浜はオフィス街の埋立地だから休日は実に閑散としたものだ。だがその一画にあるRKBの辺りだけは違った。フリーマーケットにどっちゃりと人だかり。テントブースでは焼酎メーカーや地域産品がアピールしている。ステージでは若手演歌歌手のライブもあっていて、ものすごい盛り上がりだ。
さて、そのブースのひとつに五島手延うどんが出展している。幻のと接頭辞を付けて呼ばれるうどんだ。なら、これは行って啜ってみなくては。
五島手延うどんは、作り方が素麺に近いという。
「コムギ粉を練ったものを、一本のながいひも状にのばす。乾燥をふせぐために、ひもに植物油を塗っておく。ついで、このひもを、二本の棒―日本の手延べそうめんつくりではこの棒を『くだ』という―のあいだに巻きつける。一本の棒を固定しておき、べつの棒をひっぱると、巻きつけたひも全体がいっぺんにのびて、糸状になる。これが手延べそうめんつくりの原型だ」(以上引用は「麺の文化史」石毛直道著・講談社学術文庫刊)
そう、五島手延うどんは、うどんであってうどんではない。むしろ素麺に近く、その太さを考えると古代日本に渡来したばかりの索餅・索麺に近い可能性が高いのだ。ちなみに素麺の作り方の麺は朝鮮半島にはないらしく、中国南方から対馬暖流に乗ってわたってきたらしい。
ではなぜこれをうどんと呼ぶかというと、JASの分類で大きいほうから「干しひらめうどん」「うどん」「ひやむぎ」「そうめん」と分かれており、素麺は直径1.3ミリ未満とか決められているからだ。作り方ではなくて、太さの基準で分類している。五島手延うどんにとってちょっと迷惑な状況なんである。
ごたくはこれくらいにしておいて。
イベントブースで供される五島手延うどんは一杯500円。
白いうどんが汁のなかできれいなウェーブを描いて泳いでいる。
ではまずはスープを。
ずずずと啜ってみると…すっきりとした魚系ダシだ。だがそのスッキリのむこうに、うっすらと野趣を感じる。五島灘や対馬海峡で獲れるアゴ、つまりトビウオのダシだろう。
トッピングはてんかすとネギ、おぼろ昆布に、魚のすり身を揚げたもの。九州でいうところの天ぷらだ。この天ぷら、鰯とかのいわゆる下魚をつかったもの。だから色も灰色にくすんでいる。齧るとざっくりした歯ごたえ。ぐいぐと魚の旨みがおしよせてくる。
そしておもむろに麺を。
箸で持ち上げると、プリンプリンとした滑らかさを感じる。なまめかしいくらいの白い艶。これはやはり手延べで仕上げられた麺だからだろう。
で、咀嚼してみると。
おおー。ちゅるんちゅるんだ。
歯ごたえが上品。
まさに鄙まれ、という感じ。
五島は都鄙の対比で言えば間違いなく鄙なんだが、そういうことではなく、この一杯の中に「鄙まれ」が凝縮している。スープの中に垣間見える、あるいは天ぷらの味と歯ごたえの野性的な力強さ。そしてそれとまったく対照的な麺のたおやかさ、繊細さ。
これはすごい。このブースのお店がつくる一杯も、五島手延うどんの美味さを演出しようというセンスを感じる。
お勧めです。