福岡市別府:くくる 別府麺どころ化への一里塚的ちゃんぽん。
長崎からバスに乗って博多に着いた。
ん?
ながさきかぁらぁふぅねに乗って、こおべにつぅいぃたぁ〜♪
…という唄があったなあ。
歌詞だけ字面にすると、それがどうした?という感じではある。
さて、長崎から延々2時間15分、高速バスに乗って福岡に着いた。そこから路線バスで10分少々。福岡の自宅の最寄のバス停で降りる。
土曜日の午後1時過ぎ。
例によって微妙に昼飯を食い逃している。
単身赴任で長崎に行き、福岡に帰ってくるのは金曜日の深夜というケースが多い。こうして昼間の自分の街を明るい昼の日差しの下で眺めるのは久しぶりだ…。
あれ?
通りに面したマンションの1階、その駐車場部分に真っ赤なのぼりがぼこぼこ立っている。さながら戦国時代の砦のようであるが、書いてある文字は…。
「ちゃんぽん」「ちゃんぽん」「ちゃんぽん」。
ううむ。
これは長崎帰りのボクに対する挑戦ではなかろうか。
というか、少なくとも半年前に歩いた昼間のボクの街にはなかったものだ。
なら、入ってみなければ。
(この行動、なんだか犬のマーキング=しっこのようであるな)
「いらっしゃいませー」
ドアを開けて入ると気持ちのいい声で迎えられた。
先客は近所のおばちゃん2人組、家族連れ、それにカウンターに男女それぞれ1人ずつ。昼の時間をはずした別府の店としては入っているほうではなかろうか。
オープンキッチンの厨房ではご夫婦と思われるお二人が忙しく立ち働いている。
フロアを取り仕切るのはその娘さんかな。
笑顔がきれいな方だ。
ちゃんぽんは750円。
この地域としてはちょっと強気な値段かもしれない。
「ちゃんぽん、お願いします」
強気には強気で応える。長崎帰りをなめんなよなってな感じだ。
数分たって、目の前に上品な器に入ったちゃんぽんが出てきた。
きちんと炒め茹でられたキャベツ、その他の野菜。透き通ったもやしが、キブンだ。具材は長崎から取り寄せていると壁に書いてある。
確かに長崎で売っているちゃんぽん用のピンクのかまぼこが入っている。
長崎で、ピンクのに加えて、入っている緑のものがないからきれいな感じに見えるんだな。
豚肉がプルプル、きくらげがこりこり。
コクのあるスープに、唐灰汁を使った麺。
まさしく、長崎の、それもうまいほうのちゃんぽんの域に達している。
ただし、長崎のソウルフルネイティブ系のような甘さは、ない。
そこには福岡らしい洗練も、また持ち合わせているのである。
店の壁には船のロープワークが飾ってある。
ああ、これもまた「くくる」なんだね。