島原市平成:がまだすドーム 豚骨ハリハリラーメン?
長崎県島原市に、がまだすドームという施設がある。
「がまだす」は有明海沿岸地方のことばで「頑張る」とか「底力をだす」とかいう意味がある。
この施設は正式名称を雲仙岳災害記念館という。
平成という地名は日本各地にあり、田んぼだったところが住宅地や商業地として街区に整地されたりしたところが多いのだが、ここは平成になってから埋め立てられた場所だ。
雲仙普賢岳の噴火で堆積した火山灰や、土石流で押し寄せた土砂を使って埋め立てられている。
今から20年くらい前。雲仙普賢岳が唐突に噴煙を上げ、それから5年にもわたる長期の噴火活動が始まった。この施設では噴火の最初から終結までの活動記録、特に世界でも珍しくリアルタイムに記録された火砕流•土石流について詳細に展示されている。間近にみることができないそういった現象を、直径14mの円形スクリーンで体験できる「平成大噴火シアター」は出色だ。自分が立っている床自体が鳴動し動き、熱風が装置から吹き出してきたりして臨場感満点。ふだんのフツーの幸せが、予期せぬことでグダグダになることもあるという大人の教訓を教えられる気がする。
そういう地球の情け容赦ない造山活動に対して、人間界にどのような被害がもたらされたか、それに地域の人々や国がコミュニティを守るために何を行ったかがきちんと展示されている。
最後に展示場を出るところで、日本の国のあちらこちらから寄せられた声、島原の方々から国内の方々のさまざまな支援に対する感謝のことばが述べられている。
見終わって展示会場から出てきたとき、有明海と普賢岳の両方を見渡せる明るいラウンジで「あぁ人間っていいなあ」としみじみと思える。
いい展示だ。
…と感慨に耽っていると、そこにケルンの森という喫茶コーナーがあるんである。
メニューを見るとラーメンが。どうやら久留米のラーメンを意識して作っているようだ。で、メニューの名前に「山崎屋がまだすラーメン」と書いてある。なんだろう、この山崎屋って。
店のバイト風のお姉さんに尋ねてみた。
「店主の名前です」
んんと。そういうことらしいです。特に意味はなかった。
尋ねた手前、頼まざるを得ない。もとよりテナントで博物館に入っているお店だ。それほど期待もしていない。
ここの厨房はスープをいちから仕込めるような施設ではないだろう。業務用の材料を使っているのだろうが。
だが。
その割にはしっかりしたもんが出てきた。
麺は九州のラーメンには珍しく多加水系の、卵が練り込まれたような透明感ある黄色の縮れ系平麺。ちゅるんちゅるんという食感が楽しい。麺の茹で揚げ具合がいいのだと思った。
トッピングは多分自家製のチャーシューと、特筆すべきは大根のハリハリ漬け。この店のお品書きによると久留米ラーメンでは一般的なものなんだそうだ。勉強不足のボクは久留米ラーメンへの探求がほとんどできておらず、この味の楽しさを知らなかった。
結論から言えば、豚骨ラーメンにハリハリ漬け、ありだと思う。この漬け物は一般的に科調が効きすぎているきらいがあるが、ラーメンと科調はつきものと考えれば、そう悪かない。かりかりとした食感と微妙な甘辛さが意外と合うのである。
このラーメン、お値段は650円。
雲仙普賢岳火山活動の終結宣言が出て今年で13年。だが島原はまだ復興の途上にある。
なればやっと平静をとりもどしてきたこの静かな普賢岳と有明海の穏やかな風景を見ながら啜る麺というのもまた格別ではないか。
お勧めです。