諫早市飯盛町:251ラーメン 街道沿い・常連ドライバー御用達。

 世のなかには「そみつ」という言葉がある。
 平仮名で書くと実に分かりにくい。
 漢字で書けば「疎密」である。「ほとんど(それが)ないという状況と、翻ってこっちはメッチャある!という状況」ということを示す。


 例えば長崎の千歳町電停前から長大付属小学校までの数百メートル。やたらローカルな場所の選定で申し訳ないが、ラーメン屋、ラーメン屋、うどん屋、そば屋、ラーメン屋、ラーメン屋、そば屋、うどん屋…と、これでもか!というくらいに麺系の店が続く。


 一方で…例えば長崎市内、そうだな、街の中心の諏訪神社から島原半島の付け根のあたりまでクルマで走ってみよう。電車通りから日見峠まで…道ばたにはラーメン屋もうどん屋もない。日見峠から飯盛まではトンネル手前にうどん屋。そしてその飯盛の真ん中あたりに、屋根にデッカく「ラーメン」と書いたラーメン屋。それを過ぎると島原半島の付け根である愛野まで麺系の店は皆無となる。走行距離およそ45キロ。結構な距離なのに、ルート沿いにはうどん屋とラーメン屋が1軒ずつしかないのである。北海道の原野の話ではない。人がきちんと集住している長崎の郊外の話である。


 さて、今日は、その麺不毛のルートに燦然と輝いている唯一のラーメン屋さんのお話。


 この道を初めて通ったのは3年3ヶ月くらい前。長崎に転勤してすぐの頃。このブログも始めていたことだし、国道沿いの、エンジの屋根に青く大書きされた「ラーメン」(またこの文字がヘタウマ風なんだ)という文字を見逃すはずはない。
 けれどこの店、大都市近郊の畑の横にあるスナックのようで、中が見えるような造りではなく、どうも入りづらい感じなのだ。
「そのうち潰れるんじゃ…?」
 そう思っていたが…思いながら3年が経ち、今やこの店の前を通ること70回をゆうに越えた。


 この日もまた「青いラーメン」が目に入り、「まだ潰れんなあ」と思ったところで「営業中」というドア横の文字が目に入るに至って考えが変わった。
「これは何かのご縁かも知れん。入ってみよ」
 クルマを止めて、スナックのような(しつこい)ドアを開けて中を覗き込んでみた。
 カウンターにはおばちゃんが一人。作業服の先客二人。天井からは観光地の提灯がズラリと下がっている。
 ビミョーだ。しかし先客が、しかも常連の風で座っている。
 意外と旨いかも知れん。


 たまたまこの日は朝飯を抜いていた。腹減りまくりだ。そこでついつい「大盛りください」と頼んでしまった。レギュラーラーメンのレギュラーサイズは500円である。大盛りは200円アップ。


 注文を受けたおばちゃんは「はーい」という返事を残して、奥に引っ込んでしまった。んーと。このカウンター(内部はキッチン施設としか思えんのだが)は何だろうねえ。


 5分ほどして、奥からドンブリ持ったおばちゃん登場。


 見れば白っぽい豚骨スープに、チャーシューが二枚、キクラゲに海苔に、まん中のモヤシが目を引く。


 ほほー、意外と盛りだくさんなトッピングだねえと感じながら、まずはスープをば。
 ズズズッとすすると、塩味のさっぱりとした豚骨の旨味。麺をたぐると、これは湯切りの甘さがノッペリとした歯ごたえを生んでいて、それはそれでふうわりとした小麦感があって、逆に意外といい感じ。


 トッピングのバランスも良く、おばちゃんの気の細やかさが現れている気がするラーメンだった。


 きっと、国道251号線を行き交うドライバーさんたちも、この気持ちの細やかさが込められたラーメンを食べにくるのだろうね。スナックのような外観ながら、しっかりと地に足ついたお店なんだと気づかされる昼飯でしたよ。