福岡市六本松:ラーメン亭・福岡魂 一杯入魂の町麺。

 町麺は、いつもしずかにそこにあって欲しい。
 町の風景にとけ込みながらもしっかりとその腕で味を守っていていただきたい。
 そういう雰囲気は数回前の「ラーメン大連」のときにNHKのドラマで登場したラーメン屋さんのありようを説明する中で述べたところ。


 ところが。


 福岡の六本松に、やたら気合いの入った、けたたましい町麺がある。
 「ぃ〜いらっしゃいませぇええ」
 ドアを開けるやいなや、この日もやたら元気な声で迎え入れられる。
 店の名前からして勇ましい。
 「福岡魂」。
 そして「一杯入魂」の四文字が店の外壁にも大書きされている。
 もう、気合い入りまくり。


 ときは土曜の午後2時過ぎ。ご店主の気合いの割には完全なアイドルタイムだ。
 ほかにお客さんはいなかったのでカウンターに座った。ラーメン屋さんなのにカウンターには焼き肉か鍋か、なにかの炉が切ってある。ここの店主さんは居抜きでラーメン屋さんを始めたんだろうね。これくらいの時間にここに来るのは3回目かな。


 さて、今回頼んだのは半チャーハン付きのラーメンセット。
 最初に来たのは2年近く前のことだと思う。ここはフツー(デフォ)のラーメンを「入魂ラーメン」という。仕方なくちょっとコッ恥ずかしく思いながら
 「入魂ラーメンください」
 と頼んだ覚えがある。オープン当初は1杯390円だった。その安さに驚いたが、単なるデフレラーメンではなかった。滋味溢れるスープに、きちんと料られたチャーシュー。手抜きのないしごとで、確かに「入魂」されていると感心したのだった。


 今回改めてメニューを見てみたら、1杯480円。おお、やはりあの値段では無理だったか。しかし480円でも十分安いぞ。
 いろいろ悩んで、半チャーハンとのセット750円にした。ちょっと高いかとは思ったが。



 しばらくして、まずラーメンが出て来た。
 あわい褐色の豚骨スープに、肌色のチャーシュー、ブラウンのキクラゲ、緑の葱、白と黄色のコントラストがキリリとしているゆで卵が浮かぶ。
 ブワンと鼻孔をくすぐる豚骨の匂い。
 うまそおだあ。
 ということで、まずはスープを木サジで。
 見ての通り、アブラは殆ど表面に浮かんでいないが、味の含みというか、滋味はやはり濃い。うまい。まさにスープの味の含みで勝負をしている。うまいなあ。
 麺は替え玉を前提とした麺にしてはちょっと太目かも知れない。が、ずるずるといける。うまいぞ。



 と、ラーメンに集中していたら、チャーハンが出て来た。
 このチャーハン、飯粒がぱらりぱらりと炒め上げられていて、うまひっ!
 このチャーハンなら、半チャーハン付き750円はまったく高くない。食べてみる価値ありである。


 やたら元気いいお店だけれど、ビルの1階の通路の奥に引っ込んでいるのだから、これくらいの元気でちょうどいいのかも知れない。


 この店は六本松の宝物の一つだ。
 若者集う九大の教養学部が移転して出て行った六本松には元気が必要だ。そう考えると、いい町麺ができたものだ。ぜひ定着して行って欲しいと思う。
 僕もまた行く。