福岡市上呉服町:みやけ 日本パスタ食の聖地で食う絶品。

shin_papa402006-06-14

仕事の途中、無性にうどんを食べたくなるときがある。
そのときに明確に「この店」とイメージが固まっているときはいい。
そうでないときは「あの店でもない」「この店でもない」と悩ましかったりする。
「何を昼飯ごときで」とその悩みが分からないヒトは、日本の繁栄を支えてきた働くお父さんたちのことが全く分かっていないといっていい。


そうした昨日昼。
仕事先で午前中の打ち合わせが終わったのは昼前の11時20分。
「まだ昼飯には早いなあ」と一緒にいたH谷川嬢に問いかけると、
「うどんとかだったらいいですよ、今からでも」。
そのときにピーンと来たのである。
ここから歩くと、名店「みやけ」までは15分くらい。
11時35分とかであれば、まあ昼飯としても良かろうもんという感じ。


そこから歩く道すがら、井戸の手押しポンプが鈍く光る千代町の下町風情を愉しんだり、昔ながらの饅頭を買ってみたり。ゆるりと散歩をしながら11時40分くらいに「みやけ」についた。


「こんちはー。よかですかあ?」
戸をあけて中に入れば客はボクらだけである。

昔ながらのしもた屋。
磨り減った土間とそこから生えた作り付けの小さなスツールが歴史を感じさせる。
「おばちゃん、ボクはごぼ天うどん」
H谷川嬢は若布うどんに卵を落としてもらった。
見れば、うどん釜の中に垂らした大徳利からすめ(つゆ)をうどんの上にかける。
これは博多のうどん屋数店で見る方式である。


熱々のうどんが運ばれてくる。
縁まですめがいっぱいだから器を持てない。
まずはうどん麺から啜ることになる。

これがまた太い。ボク(42歳のやや太目の中年)の小指の太さくらいある。
ずるりずるり。
エッジがしゅっと…立っていない。断面はやや丸っぽい四角である。
グルテンのぎゅうーっとした腰が…柳腰かな。まあ歯ごたえはある。
恐るべき讃岐うどんの、まるで対極にある存在である。
では、うまくないのか?

旨いのである。
すめは、カツオだしをしっかりと感じる逸品。
それが柔めの麺の表面に染み込んでいくのだろうか。
物凄いマッチングである。
勢いあまって「もう一杯」と頼んでしまったぞ。
二杯目は「きつねに卵落としてください」というオリジナルな組み合わせ。
これも揚げにしっかりと味が染み込んでいて、しかもその細切れの揚げがてんこ盛りという面白さ。


実はこの柔らかい麺としっかりと旨いすめだからこそ、近所の子供たちは幼少の頃から「消化にいい」と親から食べさせてもらい、その子が親になったときにまた子供をつれてくるのである。働くようになったお父さんたちも懐かしくも現在進行形のこの味につられてくるのである。

と、時計は12時を指し、見る間に店内は満員となっていった。

思えば謝国名が衆上にパスタ食を振る舞い、それが故に日本で最初に一般民衆がパスタ食へ欲求を感じたのはこの辺りである。パスタ食に関しては日本のオリジンである歴史的な場所で聖地なんであった。