東京神田:大福楼 あの日の牛肉麺を想い、啜る。

shin_papa402007-10-25

もう18年ほど前のことだ。
東京で駆け出しのマーケターとして何とか仕事をしていた頃。
沖縄に2回ほど出張した後だったろうか、その頃はまだ今ほど話題になっていなかった「沖縄すば」に注目した。


白い小麦粉由来の麺。
半透明に澄んだ汁。これは豚骨とカツオダシベースで比率は店ごとに違うといわれていた。
そしてトッピングはカマボコ、ソーキ煮か三枚肉、そして蓬など。
殆どの店で紅しょうがを入れていた。


麺の上に肉が載る? 


そのことに特異性を感じたボクは、
肉が乗る麺を食い比べしてみようと職場の仲間を誘って横浜の中華街へ行った。
今考えると、麺を食うために東京の西部の住人が隣県の盛り場まで行くのである。
大したバイタリティであった。


行った店は徳記という名店だったと思う。


さて今回行ったのはJR神田駅のすぐ近く。
西口商店街から少しはいったところ。
まだ新し目の店「大福楼」である。


例によって初めての店は外から少し覗いて様子を伺う。
うん、高くなさそうだ。
そうしてご入店となるのである。


最初は台湾腸詰やビールなどを頼み、
バイトできているんだろうか中国ネイティブのお姉さんと女将さん(この人もネイティブ)とのやり取りなどを聞きながら気分を盛り上げる。
ビールの合間に口を楽しませている腸詰の温め方や味の具合からすると、この店は期待できそうである。


「すみません、牛肉そば、ください」
姉さん方のやりとりの切れ目で、頼む。


しばらくして運ばれてきた。
そうそう、これこれ。
半透明の汁の中に小麦由来の麺。
そして肉がゴンと載っている。


やはり沖縄すばとは大きく違うのだ。
沖縄すばは、豚肉が載る。
中国風の麺は牛肉だ。
大陸内部ではさらに羊肉となるに違いない。
だがやはり、中国料理のこの麺を参考にして肉を載せたのではないだろうか、沖縄すばも。
若いマーケターだった頃、わが身を触媒として人々による市場と心情を見極めて、昇華させてプランニングしようとした情熱を、沖縄すばを思いながら啜りこむ牛肉麺の湯気の向こうに想うのである。


沖縄すばはその後紅しょうがを大方は捨て、化学調味料の多用から脱却して無化調への大きな流れの中にある。
すっきり、シンプルが今の風潮だ。
いっぽう、中国由来の牛肉麺は縦横に香辛料が香る複雑系を崩してはいない。
そうした複雑な肉とスープの味を、
しゃっきりとした菜っ葉が洗う。
大福楼の牛肉麺
ついそういう若い頃を思い出させ、麺の大いなる文化の伝播を再度思わせる銘麺であった。
また行こうっと。