長崎県長崎市:共楽園 ネイティブが作る鶏系ちゃんぽん。
久しぶりにペースを取り戻しつつあるこのブログだが。
振り返ってみると、長崎に住んでいながら、あまりにもちゃんぽんや皿うどんの登場回数が少ないことに気がついた。
敬意を表して行った四海楼、甘みが微妙にうまい下町の桃下苑、街中の味美…それくらいであった。思えば前の永楽苑にしたところでちゃんぽんには定評があるのである。
ということで、まずはちゃんぽん比率を上げてみようと思ったのだ。
だが、ただうまいまずいを書いたのではこのブログの沽券にかかわる。
そう考えながら長崎の中華街を歩いてみた。素敵な店がいっぱいだ。値段を見て回ると、ちゃんぽんはどの店も840円。カルテルか何か結んどるんだろうか?
特製とか、ちょっと上等なものになると値段は自由のようで1260円とか1575円とか。
ところで、長崎県民の経済状況をご存知だろうか。
07年度の数字で恐縮だが、最低賃金ランキングでは全国最下位の沖縄の時給618円のひとつ上、つまりブービー賞の619円。サラリーマンの平均年収は下から10番目の389万円。ちなみに最下位は沖縄の327万円、1位は東京で614万円。
ボクはいろんなご縁があってたまに沖縄にに行くのだけれど、沖縄の面白さのひとつは安くて面白い食事にある。信じられないような値段で、B級としかいえないけれど面白い食べ物がある。田舎町の大衆食堂で食べる「ちゃんぽん」(これは麺ものではない)や、沖縄そば(150円というのもあった)とか、あるいはヤギ肉とか。
誤解を恐れずにいえば、長崎県民の経済状況からいえば昼飯に日常的に800円とか1000円とかかけるのは無理だ。そして中華街や四海楼でちゃんぽんを食している人の多くは長崎県民ではない。
なれば街中の800円未満のちゃんぽんにこそ、長崎県民に愛されているちゃんぽんがありはしないか。そう考えたのである。
その新しい見地に基づき(それほどのことか?)、その栄えある(?)最初の店に選んだのは共楽園。しごとで歩き回る長崎市内エリアのどまんなか。有名な眼鏡橋の近くにある。
時間は午後1時40分頃。開店前から並ぶというこの店も、昼飯時間を十分に過ぎたこの時間には誰も並んでいない。
ガラリとドアを開けて入る。
お客さんは4割程度の入りか。この時間にしては十分だ。
それでも、一組去ると、また一組入るという感じで途切れることが無い。さすがだ。
座って、ちゃんぽんを頼もうとすると「ちょっと待ってください」といわれる。どうやら奥の部屋に6名程度のお客がいて、お冷を出すのに一生懸命のようだ。
ようやく目の前に店員さんが来たと思って頼もうとすると、すっと通り過ぎてボクの後にはいった常連さんのところで注文を聞いている。ちょっと?な感じ。
そのあとボクのところに来てくれてやっと「ちゃんぽんください」と頼むことができた。
7分位して出てきた。
常連さんが頼んだちゃんぽんよりも先にボクのが出てきた。ちゃんと見るところは見てるんだな、と合点した。
出てきたちゃんぽんは、ぶわんと鶏がらスープ由来の香りに、油で炒められた野菜や魚介の香りが混じって鼻先をくすぐる。いい感じだ。
スープは豚骨スープ系の乳化した白濁系ではない。鶏がらスープ系の透明感がある薄い褐色系に、炒め物による濁りが漂うもの。
啜ってみると。
口の中にすっきりした旨味が広がる。ファーストインパクトは鶏系の旨味、そして炒められた魚介や豚肉、野菜からの甘みなどがセカンドとして押してくる。
もしかすると豚骨系のスープに慣れた人にはソウルフルと感じないかもしれない。だがボクんちで母が昔作ってくれたちゃんぽんは鶏がらからスープをとり、そのスープストックから作っていた。その味の記憶があるから、ボクには結構これがソウルフルな感じだ。
具材はかまぼこ、キャベツ、ちくわ、豚肉、もやし…。特にイカげそが多いのがいい。さらにアサリが妙味を添える。これ、冬場は牡蠣になるという。冬場も、また来て見なくてはと思わせる。
具材の味、量、など印象としては地元麺として第一級だ。
ただし麺の印象は無い。ちゃんぽんとはそういう食べ物かもしれない。全体の満足感があれば、それはそれで大成功なのであろう。
厨房で鍋を振るう方は中国姓だと聞いた。長崎には福建省からの移民の方が多く、それがまた長崎の市井の文化の一翼を担っておられる。当初感じた客あしらいの???についても、別にそう考えると、それはボクが知らない文化に出会ったというだけのことかも知れない。
そういう長崎の文化に触れる場としても、最終的な店の満足感としては◎である。また行こうっと。