福岡市六本松:琉球ヌードル 川満さん手打麺はひとまず今月末まで。
ボクの沖縄そばらー歴は20年を超えた。
その出会いはしごとで沖縄担当になったとき。
沖縄の各種文献を読み、また現地に行くと沖縄人のソウルフードとして「沖縄そば」の名前が上がる。でも東京には当時沖縄そばを全面に出した店はなかった。県出身者が集うディープな沖縄料理屋にひっそりとメニューとして準備されていただけだった。
東京のオキナワ好きにどうゆう食べ物かと尋ねると、彼はニヤリと口元に笑みを浮かべて遠くを見やるような眼差しになって
「そばなんだけどさぁ、白いんだよなあ。小麦で出来ててそば粉じゃないんだ」
と、よくわからない説明をしてくれたものだった。
沖縄を3回目に訪れたとき、やっと沖縄そばを食べる機会に恵まれた。
こってり。
麺はぼそぼそ。
化調てんこもり味。
肉が乗ってて、紅ショウガの赤が目にチラチラする。
なるほどなー。アジクーターという沖縄の味付けをそのまま麺にしたようなものだなーと妙に感心した覚えがある。
肉が載っているという共通項があるからと、牛肉載せ中華そばに源流があるかと思い、横浜中華街の有名店まで食しに行ったこともある。行った結果、全く違うという感想を持ち、単に同僚と中華で飲んだくれて東京に戻ったんだった。
その後、ラーメン界に無化調のトレンドが訪れた。
沖縄そばの化調問題については、さとなおさんの著書「沖縄ヤギ地獄」に、かつてラードを多用した沖縄料理が植物性のオイルを使うようになって、不足した「コク」を補うために化調を多用するようになったという考察があったように記憶する。
そういう沖縄そばにも無化調の波が押し寄せた。
いま、沖縄で有名店、人気店といわれ本に取り上げられるのはそういう無化調系の店が多い。
その一方で、昨年の9月に行ったいにしえ系(アジクーター、科調クーター)な大福みたいな店に出会うと、静かに20年前の雰囲気に浸ったりするのである。http://d.hatena.ne.jp/shin_papa40/20091007
さて。
4年前に福岡の別府(べふ)という街に引っ越した。
勤め先から別府に帰る道筋にいくつかの街があるのだが、そのうちのひとつである六本松の寄り道先を探していたところ、つい引っかかってしまったのが「琉球ヌードル」。
沖縄そば屋か?と思って覗いたのだが、居酒屋だし、角打ち(立ち飲み系…といってもスツールがある。カウンターのみあり)だし、何より「沖縄そば」ではなく「琉球ヌードル」だし。何やら違和感ありまくりなんである。
とはいえ店長の川満さんの人柄もあって、また常連さんのコミュニティも心地よくてたまに行くようになった。
スーチーカーがうまい。ハーブが効いていたりして、沖縄で食べる物と少し違う。
常連のおばあが厨房に入ってつくった人参シリシリーも旨かった。
そしてダントツなのは、ここのそば。
ダシは意外とこってりしている。無化調だが、しっかりと鰹節で基本のダシをとるのだ。
通っているうちにトッピングも少し変わってきた。沖縄のかまぼこから和風のかまぼこへ。それに水菜が散らされて、見た目にも肉とそばとかまぼこと水菜のそれぞれの色の対比が目に鮮やかだ。
そして何より麺が、変わった。
当初は同じ系列の他店で使っていた麺を仕入れていたが、途中から川満さんの手打ちの麺に変わった。これがクニュリとした絶妙のコシ。ネイティブ沖縄そばにはあまり無いほどの平麺なんだが、このコシであればこの薄さでないとだめだろう。
結果的に、ネイティブ系(化調系も無化調系も含めた)のいわゆる沖縄そばからすると、一頭地を抜いた別の麺料理ができたのだ。
沖縄そばに源流があり、そのモチーフをなぞってはいるが、これは沖縄そばならぬ川満流琉球ヌードルなのである。
その川満さんが今月末で店を去ることになった。
新しいご担当の方にも期待するが、なによりこの麺この味を創り上げた川満さんの琉球ヌードルを味わえるのは今月末まで。
ここまでお読みいただき、ご興味を抱かれた方は、急がんと、です。