鹿児島天文館・三平 おっとびっくり南の町に味噌ラーメンの絶品が。
いきなりで申し訳ない。
最初の話の筋から行くと、博多のうどんあたりから始めるのが順序というものである。
ボクもそうしたかった。
だがシゴトや何かでとうとう博多の町に出ることなく、こうなってしまったのである。
その日案内してくれたのは会社の後輩のM松。
だからお前、そのポマードで固めたカタパルトのような頭はサラリーマンとしてどうなのよ?
「しょうがないっすョ。カゴンマのラーメン食べてたらこんなになったっすよ」
その口調がすでに何か違うぞお前。
そのカタパルトM松が連れて行ってくれたのが三平である。
何といっても怪しさ爆発の路地の先にあるという立地がソソッてくれるじゃないの。
「ここは黒味噌ラーメンがうまいんです」
麦とか米とか、白とか赤とか聞いたことあるが、「黒」はないぞお前。
と思いながら「黒味噌ネギラーメンいっぱい」とオーダー。
若くて威勢のいい兄ちゃんが「へいお待ち」と出してくれたものは…
おー黒い黒い。
黒いというか、まあ八丁味噌の色をもう少し濃くしたような。
そして表面を透明にテカらせているのは…。
脂じゃ。
こりゃー太るかなあ。
「コレつけて食べてください」
とM松が渡すから何かな、胡椒かなと思って黙って手を出すと。
ジンギスカン屋で着けさせられる、一気に幼稚園の粘土遊びレベルに大の大人を引き摺り下ろす恐怖のアイテム「紙エプロン」であった。
何と、何から何まで意表をつく店である。
これで、こんなカッコまでして食わされて不味かったら承知せんぞ。
ずる、ずるずる。
麺はしっかりと麦の味を伝えている。
スープはやはり八丁味噌がベースで様ざまなスパイスが効いているようである。
うまいじゃないの。
横ではM松が何もいわずにずるずるずる。
食い終わったら、エプロンに脂が飛んだ跡が点々と。
やはりカッコを気にしてはいかんのだな。人のいうことには従うもんだなと、納得の一杯。鹿児島といえばとんこつラーメンをイメージするのが常だが、自由な発想はこんな名品を生み出した。
酔っ払って連れられていったから、今度もまたM松を呼び出さんと行けんな。
〔お店メモ〕
鹿児島市、天文館といえば泣く子も黙る九州有数の歓楽街。だがヘビーな風俗はないらしい。夜中はラーメン店が百花繚乱である。ああ酔っ払っていたせいもあり場所が説明できん。有名な店らしいから天文館辺りで聞いてくれ。
ところでなぜ「黒味噌」なのか。メニューには「当店の味噌は三倍濃い」と書いてあった。そこらに謎を解くキーがありそうである。がしかし何と比べて三倍なのかがわからん。この謎は皆さんが舌と頭で確かめてください。