京都四条大橋・松葉 番外編は捲土重来のにしんそば。

shin_papa402006-04-13

早々の番外編で申し訳なし。


というのも、にしんそばには思い入れが(ちょっとだけ)あるのだ。
ボクが中学生のころだったか、例によってラジオの深夜放送ばかり聴いていたのだけれど、その中でお気に入りのひとつが「自切俳人(じきるはいど)のオールナイトニッポン」だった。当時はタモリが出始め、すでに老練の域に達していた鶴光、新進気鋭という感じだった松山千春、中島美由紀などが夜毎にブイブイいわしとったんである。

その自切俳人は決して自分の本名を明かさなかったけれど、その正体は京都でかつてフォークソングブームの旗手であった北山修だとまことしやかに囁かれていた。

その彼が当時書いたのが「秘密の京都」という体験型観光本である。もう30年ほども前。アンノン族の観光が一巡し、日本全国が「ああ、こんなもんなのか」と思い始めたそのときに出た本で、「いやいや、もっと地域にはふかーい、おもしろーいものがあるのだよ」といわんばかりの京都観光テキストであった。

その中ににしんそばの記述があった。


そばといえば、当時のボクは「ざる」。
温かいものであれば「丸天」。

そのそばの上に焼いたモンか煮たモンか分からんけれど、魚が乗っているというのが、何とも想像できなかったのである。


それから数年後、高校の修学旅行で訪れた新京極で最初のご対面となった。
そばはもそもそ。
ダシは妙に甘く。
肝心のにしんは、ごわごわ。
京都人はこんなものを有難がって食っておったのか。
かわいそうな方がたである。


それから今まで、デパートで「大京都展」などが開かれて、仰々しく「にしんそば実演」などとあっても当時の「お可愛そうに」という印象が先立ち、決して箸を向けようとは思わなかったのであった。


「しん○○さん、あそこのにしんそば、旨いですよねえ」
一緒にクルマに乗っていたH田が突然話を向けてきた。
春爛漫・桜満開の加茂川沿いを走っていた先週末のことである。
同乗している大阪のK平も「うんまいですよねえ、あそこ…」と相槌を打っている。
「あ、そう?」とかいいながら、ボクだけ話題から取り残された…。


で、これはイカンということで翌日行ったのである。その店へ。

にしんそば一杯1100円。
高いのか、安いのか。
おばちゃんは、東京の古い店と同じ雰囲気で、ま、ブアイソです。

ダシは九州と同じ系列で、澄んだものである。甘さ辛さは抑え目。
そばは、特段のものは無いと感じた。
肝心のにしんは…。写真の通り、煮たものが、小さな切り身となって…。

箸を付けてビックリ。
これは北極の氷のようなトッピング方法であった。
ずるりずるりと、7センチ×12センチくらいの身欠きニシンの煮たのが出てきた。

齧ってみた。
やはり歯ごたえはごわりごわり。
魚臭さも強い。
これがなぜそばに合うのか分からん。

と、テーブルの上に七味が。
かけるのを忘れとったなあと思いながら一振り、二振り。
山椒が勝ち気味の、独自の調合と見た。


すると、そばの上で独立していたにしんが俄然、光り始めたのである。
鼻から抜ける山椒の香りと舌には少々の辛味。そして魚臭さが感じられず、ごわごわの先にある旨み・甘みが舌の上で踊る。あいまにそばをずるずる。


ああ、こういうことだったのか。
少年の頃からなんとなく引っかかっていたにしんそばの存在、やっと腑に落ちた。

もう一度食べに行くかといわれれば、財布にそば代として1100円以上あるときであれば、勇んで行きます。


〔お店メモ〕
京都・四条大橋のたもと。評判の老舗だということだった。値段は高めと思う。