熊本市千葉城町:桃花源  熊本の麺文化に衝撃の坦々麺。

shin_papa402006-06-10

立志伝中のヒトである。
熊本ホテルキャッスルの総支配人である斉藤隆士さん。

大変大まかな説明をすると、華僑で日本に四川料理を広めたことで有名な陳健民氏の一番弟子として研鑽を積み、熊本ホテルキャッスルの中華料理屋である桃下源に料理長として来熊。総料理長となり、その後取締役を兼務し、現在はホテルの代表取締役社長として忙しい日々を送られている。
その斉藤さんが中興の祖となった桃下源は旨さが諸方に伝わるところとなり、東京の三井アーバンホテルに支店を出すほどとなった。

さて、誰も言わないからボクが言うけれど、斉藤さんとこの坦々麺の出現は、熊本の麺界に第3の波をもたらした。
第1の波は戦後寡婦の糊口のために勃興した熊本ラーメンの諸店である。
第2の波は「こむらさき」「桂花」「味千」が抜きん出て熊本ラーメンの味を引っ張った質的な変化である。「黒亭」「大黒」はこの延長線上にある。
そして第3の波は、麺の可能性をはるかに広げる可能性を見出す変化であった。

熊本ラーメンは低加水で麦を噛み締める麺と、トンコツとニンニクを活かす、人間の業と底力を感じさせる味の文化であった。
桃花源はやや高加水麺。そしてスープが驚きであった。熊本ラーメン界にあっては東京風の醤油ラーメンやその他のスープに「業」や「底力」があり得ないと思われていたのである。事実、熊本から東京に出て東京ラーメンを初めて食べて「がっかりした」という感想を持つものが多かった。
そんな熊本で一同を瞠目させたものが斉藤さんの坦々麺である。


そんなに素晴らしいのか?

素晴らしいのである。

運ばれてきた坦々麺は、いかにも辛そうに、しかしドロリとした口ざわりを予想させるスープが深い滋養を思わせる。
まずはスープをレンゲで…。ゴマペースト?ピーナツペースト?微妙である。もとのスープは鶏ガラからのものであろうが、干し海老や金華ハムや、色んな味が渾然となっている。
麺は東京のものと比べると少し低加水。だがチュルリと口に収まる。
戦後、熊本のトンコツラーメン以外で熊本の人々を納得させた初めての麺といっても過言ではない。(ちゃんぽん・皿うどんなどを除く)


ああ。
斉藤さんが熊本に来てくれて本当に良かった。

地下1階の桃花源から、多分上の階にある社長室へむかって心の中で拝みながら麺丼の底が見えるまで、スープを愉しむのである。