東京西神田:揚州商人 番外編。中国人の真面目さを凝縮した一杯。

shin_papa402006-09-29

番外編である。


過日、気鋭の食道楽者であり文化的広告人でもあるコヤピーと打ち合わせをしながら東京で会食。
まずは銀座1丁目の讃岐うどんの名店「坂田」で肉豆腐やその他もろもろと、日本酒。そして締めにうどん。
次いで、銀座5丁目のバーにて、彼は球磨焼酎の逸品「鳥飼」、ボクは薩摩焼酎の逸品「富乃宝山」。2杯目以降は忘れた。


そうして適度に酔っ払って帰ってきたホテル。
ついムクムクとある感情が沸き起こってくるのですね。

…「麺が食いたい。。。麺が食いたい。。。麺が…」
一方で、「食ったらアカン。。食ったらアカン。。食ったら…」
という、まるで白い悪魔と黒い悪魔が心の中でけんかしている状態である。
上田正樹の名曲に「とったらあかん」というのがあって、数年前までシダックスの通信カラオケに入っていて十八番にしていたのに、最近はリストから落ちてしまったなあ…などと考えているうちに、心の中では黒い悪魔が勝ってしまった。


そこでフラフラと深夜の街へ徘徊に。

場所は西神田。
近くに専修大学日本大学がある。昼間は学生で賑わうことだろう。
そして札幌ラーメン。
2階へ上がる店では台湾ターミー麺がある。
そして妖しげな「中国ラーメン揚州商人」。
ここはもしかすると麺銀座ではなかろうか。
であれば一番妖しい店に入るのが、このブログの趣旨ではある。
だが。
見れば見るほど妖しい外内装である。
赤い提灯やキンキラの看板、そして店内あちらこちらに書きなぐられた文字類。
もしや、この妖しい店は孫悟空が軽い考えで泊まってしまった宿のような、実は魑魅魍魎が巣くっているアレではないかいな。


そう思ったら入らざるを得ん。
「こんちはー」
「お一人ですかぁ」
お。中国なまりや。やっぱりネイティブであったか。
「カウンターへどおぞぉ」


カウンターへ座って、改めて店内を見回す。
店内あちらこちらに装飾をかねた麺にまつわる文字が貼ってある。


その中に、日本に最初に麺類が入ってきたときの文字である「こんとん」(※本当は漢字で書きたいのだけれど、パソ画面下のインジケーターの裏に漢字辞書が入ってしまって、書けん)が書いてあった。
そうしてみると、ワンタンは日本では雲呑と書かれたりするが、ここの壁面にはそれ様の古語で書かれている。
中国人、やるなあ。

メニューを見ると。
「良くあるラーメンは、○○ラーメンと書いてあってあたかもいろいろ工夫しているようであるが、その実トッピングを変えているだけである」「私達は根本的にそれぞれ努力をしてバリエーションを出している」(文意)と、日本人ではやらんような主張が延々と書いてある。
これはボクもよく感じていることである。

ほほう、そこまでいうなら食ってやろうじゃないの。
さっきの「こんとん」の文字を見たときからなぜかワンタンを食べたくなっているボク。
で、メニューを見てみると。
「当店のワンタンは、他店のように皮だけではない。ワンタンはジューシーな肉がガッツリと包まれていてこそワンタンである」(文意)などと書いてあるじゃないか。

ならば清湯系、トリガラスープのワンタン麺を、とオーダー。


出てきたのはすっきりとした麺。

まずはスープを。
レンゲでズズとすする。
口の中に、含みの強い鳥の旨みがふわりと広がる。
後味がスッと引くのは熊本ホテルキャッスル桃下源と近い。
だが少し舌に残るのが、幾口もすすっていると溜まってくるのは仕方がない。
化調である。
だがこの値段でこのレベルであれば、問題ないというか、ありがたい味である。

そしてワンタン。
黄味がかった皮につつまれた…おお、ジューシーなお肉ではないか。
だが皮のひらひらが餃子ではないっと主張する。

麺は多加水系。
酔っ払ったお腹と心にすいすいと入る麺である。
最初見たときは、こんな量、食えるか?と訝しがったが、すっきりとした味の構成で、全く意外だったが残すことなく食ってしまった。


主張が多いのはまさに中国人的。
だがその主張の約束どおり、きっちりと仕事してきた中国人の意気を見た思いである。