鹿児島市東谷山:仏跳麺 驚きの透明度とスープ。

shin_papa402007-01-21

ボクが見たところ、ここのところ九州で元気な場所は福岡と鹿児島だ。
何を以って元気というか。
夜の盛り場の人通りもあるだろう。
県の出荷額など経済的指標もあるだろう。
でも確かなのは、大なり小なり新たなビジネスモデルが続々生まれるところ。そういうところは大変に元気である。
何が元気か?
人が元気である。


一時期の熊本もそうだった。

イエローページのブームの頃、街文化の面白さを若者が積極的に利用した。
タウン情報誌の創刊ブーム、別冊ムック本の発行…。
だがその後、地域の新聞社など大資本に汲み上げられることで、各地のタウン情報誌文化は消費しつくされて定着し、ビジネスモデルとしてはステレオタイプとなった。

街に近いのに人が来ない一画があった。
建物は古びているけれど素人作業で手を入れることで商空間に生まれ変わらせることができる。小資本の若者が若者の手で作る空間。熊本ではシャワー通りという地域がそうであった。
その後、商業地域として当然イケルと踏んだ大家側が建物を改築して家賃を上げる動きが出て若者の手作りの商空間シャワー通りは霧散した。全国的に面白いファッション空間と捉えられていただけに残念である。
その若者が手作りで商売を始めるというモデルが、表参道の同潤会アパートなどの面白い空間作りに結びつき、また大資本に絡め取られていくのである。


さて最近のビジネスモデルの有力な分野は「麺」である。
味、量、料理法、立地、規模の組み合わせで集客が図れ、小資本でも始められる。
何を重視するか。コストをかけるか。世の中の趨勢はどうか…。
多くの若者が修行をし、その分野での立身を目指して頑張っている。
ある人はコンサバ麺を追求し、またある人はニューウェイブ系を極める。
麺食いのボクとしては実に有難い世の中である。

さて、九州で、その意味で特に元気なのは福岡と鹿児島である。


ここのところ鹿児島では谷山が、面白いらしい。
そう聞いていたが、本日は少しそのはずれである東谷山。
しかもチェーン店である。


さつま麺業といえば、「麺どころさつま」「うどんの一徹庵」「がんこ庵」「炙りチャーシュー文炎」「麺屋金山」など麺の多業態展開で地元では有名だ。
そのうちの仏跳麺(ぶっちょうめん)という店が、東谷山のバイパス沿いにある。


チェーン店である。
ついつい、単店と比べると如何なものかと思ってしまうではないか。
だが街道沿いの店への偏見でさえ、このブログ制作の中で覆されてきた体験がある。
ならば熊本の味千のような、結構いけてるチェーンの可能性も高い。
そう考えて入ってみた。


頼んだのは仏跳麺のチャーシュー入り。
820円。
高いなあ。
概して鹿児島のラーメンは高い。
替え玉を前提とし小腹が空いたときによく食べられる博多ラーメンより高いのは分かるとしても、同じく一度の食事としての充実度を前提とする熊本ラーメンよりも劇的に高いのはなぜなのか。謎である。


などと心の中で反芻しているうちに麺が来た。

おおおっ。
何と透明感のある、黄金のスープ。
豚骨をベースとしているのに、澄み渡った様が、なんとも綺麗である。
「美麺」という言葉を思い出した。

まずレンゲでスープを啜ってみると。
豚骨だけではなくて、トリガラも入っている。魚介系、特にホタテなどの味の含みもあるなぁ。すーっと入ってくる美味さというか。

仏跳とは、修行中の僧でさえ色んなものを飛び越えて走ってくるほどの美味さであると「美味しんぼ」で読んだ。そのストーリーは壷で作るスープであったが。
このスープも、修行僧が飛んでくるほどかどうかは置いといて、うまいなぁ。


そして美しく並べられたチャーシュー。
直径は大きくないが厚みがある。
香ばしさがプルプルの肉の味に絡む。

湯通ししたキャベツも、微妙なテクスチャーで口腔の感覚に変化をつける。
揚げネギもいい香りを出す。


麺は、ちょっと鹿児島こむらさきにも通じる、主張しないけれどそれが逆に主張を感じる麺…というか、表現が難しいな。
もそりとする直前のチュルチュルというか。
小麦の味は強くなく、どちらかというとスープや具材を引き立てる…けれど実はこれが主役という感じ。


トータルで言えば、美麺、かな。
食べてみてください。特に鹿児島県民以外の方は。