福岡市大手門:あま太郎 博多ちん麺のキホンを押さえる。
過日、応用編のちん麺を食べた後、無性にキホンを押さえたくなった。
そこで仕事で百道浜へ行った帰り、ちょうど昼時になったので西公園前でバスを降りた。
季節はまさにウララカな春。
表通りの昭和通を避けて、一本裏の道をブラブラと店まで歩いていく。
先の戦争で空襲に遭ったのだろう、木造の建物は殆どない。
けれど点在する寺社と町割に古い城下門前町の風情を感じる。
そうして歩いていった簀子公園の端っこの前。
小さな四辻の一角にあるのが「あま太郎」。
以前職場の先輩に連れられてきたことがある。
博多初心者のボクに、博多のあれこれを教えてくれていたのだ。
戸をあけて中を見ると。
おばちゃんが客席に座って新聞を読んでいる。
厨房は…と見ると誰もいない。
昼時だけれど、ボウズだったんだな。
ボクを見ると、おばちゃんはすいっと立ち上がって厨房に入った。
「五目ちん麺、ください」
はーいといいながらさっそく準備に掛かるおばちゃん。
見回すと、「進村製麺所」というモロブタが目に入った。
数分して、目の前にちん麺が。
わははは。
奇をてらわない素敵な面構え。
まずはスープをば。
ズズズ。
トリガラスープなんだろうけど、塩気と甘みを結構感じる。
上品ではないが、かといって下品でもない。
トッピングのほうれん草に結構合うスープだな。
麺は…?
ちゃんぽん麺より細め。
黄色味がかった、エッジのたった麺で、断面は長方形。
コシは、ないな。
これは博多うどんの伝統を受け継いでいると見た。
トッピングは、ハムメーカー既製の「焼きブタ」のスライス。
あの、スーパーに良く売っている調味液につけたハムタイプのもの。
業務店でこれを利用しているのは初めて見たが、却って家庭料理っぽくてこの店の雰囲気ならば、よし。
そしてほうれん草。
ちくわの輪切り。
もやし。
ゆで卵の半切りとカマボコ。
そして忘れてはならないのが数片浮かんでいる「ニラ」。
このニラが微妙にソウルに訴えかけてくるんだなあ。
店の中は換気扇の音。
つけっぱなしのAМラジオのトーク。
そして開けっ放しの戸の向こうにさんさんと降り注ぐ春の日差し。
いいじゃないか。
街角のフツーが、静かに幸せに横たわっているそんな博多の午後にぴったりだ。