熊本市西子飼町:四川美味 昭和系商店街の外れにキリリ麺。

shin_papa402007-04-23

その日、例によって昼飯を食いそびれたボクは、何かあるだろうと甘い望みの許に熊本の学生街黒髪を歩いていた。
実家のある住宅街から大学の生協食堂へ。
でもその食堂も時間切れ。
では、と旧国道57号線に出て街の方角へ歩く。


ボクの頭の中には20年も前の盛況だった学生街のイメージがある。
けれど。
道路の両側には麺屋が殆ど見えない。
学生相手の定食屋も見えない。
全国チェーンの弁当屋や、九州内によくある博多ラーメンのチェーン。
何が悲しくて熊本の学生街で博多から着いたばかりのボクが、博多ラーメンを食わなくてはならんのか。
そう考えながら歩いていると。


学生街を抜けて子飼という商店街の町に出てしまった。
ならば仕方ない。
目抜き通りから、脇に伸びた昔ながらの商店街に入り込む。
この子飼商店街は年末になると必ず「正月の買出し風景」として地元のテレビで取材されるトコロである。
博多なら柳橋連合市場、東京ならアメ横那覇なら牧志公設市場に相当する。

この商店街の真ん中辺りにうどん屋があったなぁ、もうこんな時間だしあそこでもいいかな…と考えながら歩いていると。
あれ?
こんなところに麺屋ができている。


「四川美味」。
坦々麺が売りのようである。
熊本ではホテルキャッスルの斉藤さんの坦々麺の登場からしばらくは、その偉大さに追随する麺屋がなかったものの、このところ野心的な坦々麺を出すところが出てきていると聞く。
ここもそのひとつに違いない。


思わず暖簾をくぐった。
この暖簾も只者ではなかった。
小竹をつなげた簾風というか、時代劇の縄のれん風というか。


「坦々麺ください」

店主に変化が見られない。
再度声に出してみた。
「坦々面ください」
「辛さはどうしますか?」
どうやらボクの「坦々麺ください」のコトバの後に、辛さを指定するコトバが続くのを待っていたようである。
促されてカウンターの目の前の壁に貼られた説明を読むと。
レベル1は「通常」。レベル2は「やや辛くて汗が出る程度」。レベル3は「結構辛いぞ」。さらにレベルは上へ続き、最後は人技では食えないようなものになるらしい。
おとなしく「2カラで」と頼んでおいた。


出てきた。
ホテルキャッスルの斉藤さんの坦々面はゴマ(とピーナツか?)ペーストのネットリ感が視覚的にも伝わってくるが、ここのスープの色は最初から褐色で、少々凶暴なイメージを伝えてくる。

「よく混ぜて食べてくださいね」
カウンターの向こうから店主の声が神様の託宣のように降ってくる。

ここは逆らわんでおこうと思い、しっかりと麺と肉味噌とスープを混ぜる。

そしてズリズリズリ。


ううむ。
…。
うおっ、辛い。

喉の奥にカツーンとくる辛さ。
思わず咳き込みたくなる。

けれどその向こうに甘さや各種のニュアンスが見えてくる。


何かの中華系香辛料が、入っている。
この香りは…。
福岡の赤坂のホンモンの坦々麺の香辛料の香りと同じだ。
けれどこっちの方が強烈。
ちょいとエキゾティックな感じがヨイゾヨイゾ。


食べているとこめかみの辺りから汗が吹き出てくる。
アゴにまで滴ってくる。
手ぬぐいを持ってきていてよかった。


白抜きのウサギ模様のグレイの手ぬぐいで汗をぬぐいながらついに完食。
食べ終わったときには一抹の達成感さえ、ある。


見れば小さい店なのに、家族連れ、じいちゃん、そして学生風と、入ってくる層が広い。
地元に愛されているということなんだろうな。
また機会があれば来ようと思いながら、まずは涼しいところに出るべく逃れるようにして店を後にしたんであった。